SESのマージン率は38%前後ってほんと?平均値を公的資料をもとに分析

SESのマージン率の平均は何%なのか、自分の会社の取り分は多いのか少ないのか、還元率80%という数字は信用できるのか、そもそも単価を教えてもらえないのは普通なのか――こうした疑問を抱える方は多いのではないでしょうか。
本記事では公的データの数値、還元率の定義やばらつく理由、自分の会社の還元率を調べる手順を整理しました。
SESのマージン率の平均は何%?公的統計の数字
厚生労働省が公表する労働者派遣事業の令和6年度事業報告の集計結果から算出すると、情報処理・通信技術者のマージン率は38.83%です。
派遣料金と賃金は1人1日(8時間)あたりの平均額で、料金には消費税が含まれます。
| 年度 | 派遣料金 | 賃金 | マージン率 | 還元率 |
|---|---|---|---|---|
| 平成30年度(2018) | 30,389円 | 18,930円 | 37.71% | 62.29% |
| 令和元年度(2019) | 31,539円 | 19,439円 | 38.37% | 61.63% |
| 令和2年度(2020) | 32,147円 | 19,779円 | 38.47% | 61.53% |
| 令和3年度(2021) | 32,394円 | 19,886円 | 38.61% | 61.39% |
| 令和4年度(2022) | 32,871円 | 20,120円 | 38.79% | 61.21% |
| 令和5年度(2023) | 33,387円 | 20,430円 | 38.81% | 61.19% |
| 令和6年度(2024) | 34,382円 | 21,032円 | 38.83% | 61.17% |
マージン率と還元率の計算式|法律が定める式

還元率はマージン率の裏返しで、100%からマージン率を引いた値です。
計算式は労働者派遣法に書かれている
マージン率の計算式は、労働者派遣法23条5項が定めています。条文には次のように書かれています。
> 派遣元事業主は、…労働者派遣に関する料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を当該労働者派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合として厚生労働省令で定めるところにより算定した割合、…に関し情報の提供を行わなければならない。
SESの準委任契約は労働者派遣に当たらないため、この23条5項は適用されません。マージン率を公開していないSES企業が違法というわけではなく、逆に公開しているから安心というものでもありません。
同じ待遇でも還元率が10ポイント変わる理由
還元率は各社が独自に計算しており、定義が揃っていません。同じ待遇でも、何を分母と分子に置くかだけで10ポイント以上変わります。
- 消費税:厚生労働省の集計値は税込。令和6年度の情報処理・通信技術者を税率10%で税抜換算すると、料金31,256円・賃金21,032円となり、マージン率は32.71%まで下がる
- 社会保険料の会社負担分:賃金のおよそ15%にあたる会社負担分を分子(エンジニアに渡っている額)に入れるかどうかで、還元率は約10ポイント動く
- 賞与原資:月々の額面に含めず、賞与として後払いする分をどう扱うか
- 交通費などの実費:分子に含めるのか、分母から差し引くのか
「還元率80%」という数字だけでは他社と比較できません。
SESのマージンの内訳|何に使われているのか
厚生労働省の労働政策審議会の資料では、内訳の最多は社会保険料・労働保険料で、営業利益はその次です。
| 内訳 | 割合 |
|---|---|
| 派遣スタッフの賃金 | 約70.0% |
| 社会保険料(事業主負担) | 約10.9% |
| 有給休暇費用 | 約4.2% |
| 諸経費(募集採用・労務管理・教育訓練・事務所経費等) | 約13.7% |
| 営業利益 | 約1.2% |
この内訳は一般事務系を含む派遣全体の集計で、ITエンジニアの構造とは一致しません。
自分のマージン率を調べる3つの方法

平均値より重要なのは自分の会社の率です。調べ方は3つあります。
自社サイトと厚生労働省の公開データで調べる
SES企業の中には、労働者派遣事業の許可(許可番号「派◯◯-◯◯◯◯◯◯」)を併せて持つ会社があります。許可があれば23条5項の情報提供義務がかかるため、自社の実名でマージン率を確認できます。
- STEP 1
派遣元のサイトで「マージン率」を探す
自社サイトがある派遣元は、会社概要や情報公開のページにマージン率等を掲載します。「会社名 マージン率」で検索すると早く見つかります。
- STEP 2
人材サービス総合サイトで会社名を検索する
人材サービス総合サイトの事業所検索で「労働者派遣事業」を選び、会社名で検索します。許可番号と、その事業所が掲載したマージン率等の情報提供資料を確認できます。
- STEP 3
厚生労働省のブロック別一覧PDFで探す
厚生労働省の派遣会社のマージン率等についてには、事業所ごとのマージン率をまとめたPDFが8ブロックに分かれて置かれています。
関東ブロックのPDFのように所在地に合わせて開き、許可番号か事業所名で該当行を探します。
この一覧は、各社が人材サービス総合サイトに掲載した情報を厚生労働省がまとめたもので、同省が独自に調査した数字ではありません。
会社に単価を聞く|角が立たない聞き方
SESにマージン率の公開義務はないため、単価を教えない対応そのものは違法ではありません。個人の待遇を詰める形ではなく、案件の情報として聞くほうが話は進みます。
客先との契約で単価を開示しない取り決めがある会社もあります。答えが返ってこなかったことだけで会社を決めつけず、聞いたときに説明できるかどうかを見ます。
給与明細から逆算する
給与明細から分かるのは自分の額面だけです。逆算するには、もう一方の数字である客先単価が要ります。
- 契約書や注文書に単価が記載されていることがある
- 就業規則や賃金規程に、単価と給与の連動が書かれている
- 単価連動型(インセンティブ)の制度がある会社なら、計算根拠が提示される
マージン率が高いか低いかの判断基準
マージン率そのものに上限を定めた法令はありません。労働基準法6条は中間搾取を禁じています。ただし自社が雇用する社員を他社業務に就かせる形は、「他人の就業に介入」しないと整理されています。
商流が1段深くなるごとに各社のマージンが重なり、エンド企業の支払額と給与の差が広がります。問題は率が高いこと自体ではなく、単価が開示されず率を検証できない状態にあります。
マージン率が高いときに取れる選択肢

マージンは営業や待機中の補償を担っています。減らす選択は、その機能を誰が持つかの選択でもあります。
単価交渉・案件を変える
単価は案件・工程・技術領域と、契約更新のタイミングで決まります。会社を変えなくても、担当する範囲が変われば単価は動きます。
- 工程:要件定義や設計を含む役割と、テストや保守が中心の役割では単価の水準が変わる
- 技術領域:需要が集中している領域の実務経験を積んでいるか
- 契約更新:客先との単価が見直されるのは更新の場面で、そこを外すと次の更新まで動かない
高還元SESへの転職と注意点
還元率70〜80%を掲げる会社があります。月額が高くても年収では変わらない可能性もあるため、数字の内訳を確認することが重要です。
直接契約・フリーランスという選択
仲介が減れば手取りは増えます。同時に、マージンが担っていた機能を自分で引き受けることになります。
- 自分で担う業務:営業と案件獲得、契約・請求・入金の管理、確定申告などの経理事務
- なくなる保障:待機期間の収入、社会保険料の会社負担分
- 変わる評価:住宅ローンなど与信面での扱い
独立が有利になるかどうかは、案件を継続して取れるかと、無収入の期間をどこまで許容できるかで決まります。
まとめ|SESのマージン率は数字より透明性で見る
最後にこの記事の内容をまとめます。
まず派遣元のサイトと人材サービス総合サイトで、マージン率が公開されているかを確認します。そのうえで案件の単価を聞き、返ってきた説明の中身で会社を判断します。
本記事は2026年8月時点の情報です。数値は厚生労働省「労働者派遣事業の令和6年度事業報告の集計結果」および日本人材派遣協会の公表資料に基づき、マージン率・還元率は法定計算式で算出しています。
AppTime株式会社 代表取締役:システム開発・DX支援|2018年〜現在
HOJOJO株式会社 取締役CTO:技術戦略・プロダクト開発|2024年〜2025年
関西学院大学大学院(MBA課程)にて、経営管理の高度な知見を統合。
〜主な経歴〜
2017年に個人事業主として独立。エンジニアとして数多くのシステム開発を
手掛けた後、2018年にAppTime株式会社を設立し、代表取締役に就任。
現在は自社の経営のみならず、2024年〜2025年にはHOJOJO株式会社の取締役CTO(最高技術責任者)も兼任。技術の「便利さ」だけでなく、LLM・機械学習をはじめとする先端技術を活かし、企業のコストカットや「利益創出」に直結させるという、実益重視のコンサルティングを展開している。
単なるIT導入に留まらない、経営層・役員の意思決定に資する「経営×IT」の架け橋として、次世代のDXリテラシー向上を支援している。
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