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SESの商流とは?数え方と3つの実務リスク

投稿日 最終更新 読了約10分 閲覧数46

SESの商流とは何を指すのか、一次請けと二次請けはどう数えるのか、商流が深いと具体的に何が起きるのか、多重下請けは違法ではないのか――こうした疑問を抱える方は多いのではないでしょうか。

本記事では商流の数え方・深くなる理由・法令上の線引き・浅くする手順を、条文と実務の両面から整理しました。

SESの商流とは?契約の連なりで見る全体像

SESの商流とは、システムを発注するエンド企業からエンジニアが所属する会社までをつなぐ、契約の連なりを指します。お金の流れそのものではありません。間に何社の契約が挟まっているかで数えます。

呼び方誰を指すか契約している相手
エンド企業システムを実際に使う発注元直接契約する受託企業
元請け・プライムエンド企業と直接契約する会社エンド企業と協力会社
中間の受託企業上位から受けて下位へ再委託する会社上位企業と下位企業
末端の所属企業エンジニアを雇用している会社上位企業と自社の社員
SESの契約形態は準委任契約が中心で、指揮命令権は各社が自社の社員に対して持ちます。何次から「深い」とする公的な基準はなく、実務では発注元が指定する商流制限が線引きの代わりになります。

また、商流の各段で発生する取り分については、SESのマージン率は38%前後ってほんと?で解説していますのでぜひお読みください。

一次請け・二次請けの数え方は2通りある

「一次請け」という言葉には、業界内で2通りの数え方が混在しています。同じ案件でも、話す相手によって一次請けにも二次請けにもなります。どちらが正しいという公的な定義はありません

数え方エンド直の会社その下の会社さらに下の会社
A:エンドから何段目かで数える一次請け二次請け三次請け
B:再委託する側を元請けと呼ぶ(建設業の一次下請け・二次下請けと同じ数え方)元請け一次請け二次請け

SESの商流が深くなる3つの理由

商流が深くなるのは、中間企業が利益を取りたいからだけではありません。構造的な理由が3つあります。

エンド企業の与信審査と取引口座

大手企業やSIerは、取引先を登録する際に与信審査を課します。設立年数・資本金・財務状況が条件を満たさない小規模のSES企業は、そもそも取引口座(発注先としての登録枠)を開けません。

案件規模と人材確保の分業

大規模案件では、1社で必要な人数を揃えられません。元請けは自社と協力会社に振り分け、協力会社もさらに他社へ声をかけます。営業機能を持たない技術者中心の会社ほど、上位企業から仕事を受ける側に回ります。

発注元による商流制限

案件情報に「商流制限あり」「1社まで」と条件が書かれることがあります。発注元が中間企業の数を制限する条件です。

制限がある案件では、指定された段数を超えて再委託できません。

また、SESの中抜き割合は何?公的統計の答えもぜひお読みください。

多重下請けは違法?請負・準委任と派遣の境界

多重下請けは違法ではないと言われますが、根拠まで示されることは多くありません。条文で線を引きます。

多重の請負・準委任を禁じる法令はない

請負契約や準委任契約を重ねること自体を禁じる法令はありません。ただし民法644条の2第1項は、準委任の再委託を無条件には認めていません。

> 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。

契約書に再委託禁止条項があれば、無断の再委託は契約違反になります。

二重派遣は職業安定法44条違反

派遣で受け入れた労働者をさらに他社へ出す二重派遣は、職業安定法44条が禁じる労働者供給に当たります。罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(同法64条10号)。

2025年6月1日の刑法改正で、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。罰則を「1年以下の懲役」と記載した解説は改正前の表記です。

契約書が準委任でも実態で判断される

契約の形式が準委任でも、エンド企業や上位企業がエンジニアに直接指揮命令していれば、偽装請負や労働者供給と評価されます。判断基準は厚生労働省の37号告示で、契約の名称ではなく実態で区分されます。

エンド企業の指示系統に入っている場合、商流の段数にかかわらず問題になります。

商流が1段深くなると現場で起きること

商流の深さが効くのは単価だけではありません。3つの経路で実務に響きます。

案件情報が減衰する

商流が1段増えるごとに、案件情報は転記され、要約されます。実際に流通する案件メールは項目が欠けていることが多く、商流の深さや国籍要件は本文に明示されないまま、暗黙の前提として共有されています。

転記の途中で条件が落ちると、面談の直前になって商流や参画条件の食い違いが表面化します。

支払サイトと資金負担

下位企業への支払いが、上位企業からの入金より先に来る契約は珍しくありません。商流が深いほど、立て替えの期間が各段に積み上がります。支払期日の上限は、2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)などが定めています。

支払う相手支払期日の上限根拠
取適法の対象となる中小受託事業者受領日から60日以内取適法3条1項
フリーランス(特定受託事業者)受領日から60日以内フリーランス法
フリーランスへの再委託元委託支払期日から30日以内同法

責任の分界が曖昧になる

再委託先のミスであっても、発注者に対して責任を負うのは直接契約している受託者です。商流が深いと原因調査が各社をまたぎ、対応の判断が遅れます。

また、SES営業を外部に委託する場合の契約条件については、SES営業の業務委託、相場はいくら?で解説していますのでぜひお読みください。

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商流を浅くする方法と「商流飛ばし」の線引き

商流を浅くしたい会社が最初にぶつかるのが、商流飛ばしとの線引きです。

商流飛ばしは契約条項の問題

商流飛ばしは、既存の商流を迂回して上位企業を外し、直接契約に切り替える行為を指します。これを直接禁じる法律はありません。問題になるのは、契約書に置かれた直接取引禁止条項です。

契約上の請求に加え、以後の案件供給を打ち切られることが実務上のリスクになります。

商流を浅くする手順

商流を浅くする作業は、エンド企業への直接営業から始めても進みません。与信と取引口座の条件を満たす順序があります。

  1. STEP 1

    既存の商流で稼働実績を積む

    上位企業経由の稼働を継続し、稼働実績と決算書を揃えます。

  2. STEP 2

    稼働人数と財務基盤を厚くする

    与信審査で見られるのは設立年数・資本金・稼働規模です。ここが取引口座を開く条件になります。

  3. STEP 3

    準委任の契約実務を自社で扱えるようにする

    再委託条項・精算幅・支払期日を自社の契約書で管理します。

  4. STEP 4

    エンド企業とプライム案件を開拓する

    口座開設の条件を満たしてから直接営業に入ります。

また、SES営業とはどういうものなのかもぜひお読みください。

まとめ|SESの商流は契約の本数で読む

SESの商流は、エンド企業から末端まで契約が何本連なっているかで読みます。段数の呼び方は業界内で割れているため、契約の本数で確認する方が確実です。

自社の立ち位置を確認するには、上位企業とエンド企業の間に何社入っているかを案件ごとに整理します。取引条件を見直す際は、契約書の再委託条項と直接取引禁止条項を先に確認します。

本記事は2026年8月時点の情報です。条文はe-Gov法令検索、取適法の運用は公正取引委員会で確認してください。

監修者
黒田 真次郎
監修者プロフィール
黒田 真次郎

AppTime株式会社 代表取締役:システム開発・DX支援|2018年〜現在
HOJOJO株式会社 取締役CTO:技術戦略・プロダクト開発|2024年〜2025年

関西学院大学大学院(MBA課程)にて、経営管理の高度な知見を統合。

〜主な経歴〜
2017年に個人事業主として独立。エンジニアとして数多くのシステム開発を
手掛けた後、2018年にAppTime株式会社を設立し、代表取締役に就任。
現在は自社の経営のみならず、2024年〜2025年にはHOJOJO株式会社の取締役CTO(最高技術責任者)も兼任。技術の「便利さ」だけでなく、LLM・機械学習をはじめとする先端技術を活かし、企業のコストカットや「利益創出」に直結させるという、実益重視のコンサルティングを展開している。

単なるIT導入に留まらない、経営層・役員の意思決定に資する「経営×IT」の架け橋として、次世代のDXリテラシー向上を支援している。

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